妊娠すると、「この薬を飲んで赤ちゃんに悪い影響がでたらどうしよう」と心配になることがありますよね。
薬の中には催奇形性(赤ちゃんに奇形を作る作用)のリスクがあり、妊娠中は使用を控えるべき薬があります。
ただしお母さんと赤ちゃんにとって安全に使用でき、病気の治療のために継続して使用すべき薬もあります。
この記事では妊娠中の薬の胎児への影響、妊娠中は避けた方がいい薬について解説します。
妊娠週数によりリスクは変わる【妊娠4〜7週が要注意!】
赤ちゃんへの薬の影響が大きいのは、重要な臓器が作られる妊娠4〜7週までであるといわれています。
妊娠中は時期に関わらず自分の判断で薬を飲むのはやめ、必ず産婦人科医や薬剤師に相談しましょう。
妊娠4週未満
妊娠に気づかず薬を飲んでしまった場合も、妊娠4週未満であればほとんど影響がありません。
妊娠4週未満は赤ちゃんの器官形成が行われていないためです。
妊娠4〜7週前後
妊娠4-7週は赤ちゃんの重要な器官が作られている時期であり、奇形を起こすリスクが最も大きいです。
妊娠に気づかず薬を飲んでいることもあるため、心配な場合は医師に相談しましょう。
妊娠8〜15週前後
妊娠8-15週は重要な器官が形成し終わり、奇形のリスクは下がります。
末端の器官が作られる時期なので、薬の影響が全くなくなる訳ではありません。
妊娠16週〜分娩まで
妊娠16週以降は赤ちゃんの器官形成はほぼ終了しているため、薬の影響は受けにくいです。
しかし薬剤を過剰に服用すると、胎盤を通じて赤ちゃんの成長を妨げるおそれがあります。
妊娠中の薬で影響した事例
ここでは、薬が妊婦さんや赤ちゃんに影響を与えてしまった事例を紹介します。
事例の薬を使っていて妊娠がわかった方は、服用を中止してすぐに医師に相談しましょう。
妊婦さんへの影響
「ARB」または「ACE阻害剤」という種類の血圧を下げる薬は妊娠中には使わないことになっています。
この薬により妊婦さんの羊水が少なくなることで胎児の成長に影響を与えたり、早産の原因となった事例があります。
参考:妊婦:胎児への影響について(ARB・ACE阻害剤販売会社)
胎児への影響
鎮痛薬の「ボルタレン(ジクロフェナク)」は妊娠中の方には使用してはいけません。妊娠末期の妊婦さんが腰痛を訴えた際、ボルタレン坐薬が処方されました。入院中計6回のボルタレン坐薬を使用し、赤ちゃんは徐々に脈拍が落ちて、亡くなってしまうという事故が起きています。
市販の薬も注意が必要
市販の薬の中には、赤ちゃんに影響を与える恐れのある成分が含まれているものもあります。
市販の薬で有名な鎮痛薬であるロキソニンは、流産の原因となったり、赤ちゃんの血管の発達に悪影響があるため、妊娠後期(28週以降)の使用は控えるべきと報告されています。
不安な点は店舗の薬剤師に相談しましょう。
妊娠に気づく前に薬を飲んでしまった場合
妊娠に気づく前に薬を飲んでしまう場合もあります。
妊娠初期(受精から2週までの間)に薬を飲んでも大抵の場合、赤ちゃんへの発育に影響はないといわれています。
不安な場合、まず医師に相談し、飲んだ薬、種類、量を正確に伝えて指示を受けましょう。
気を付けた方がいいサプリメントもある
妊娠初期の過剰摂取で赤ちゃんへのリスクがあるサプリメントもあります。
ビタミンAのサプリメントには特に注意が必要です。
ビタミンAはドラッグストアやネットでも手に入れることができますが、過剰に摂取すると赤ちゃんに奇形を起こすリスクがあります。
妊娠初期に過剰摂取すると赤ちゃんに器官形成異常が起きる可能性が高くなることが知られています。
ただし、ビタミンAは目や皮膚などの健康維持に欠かせない栄養素なので、適正量を意識して摂取しましょう。
持病で薬を飲んでいる場合は
ぜんそくや精神疾患などで薬を飲んでいた人が妊娠に気づき薬の服用をやめると、母体がバランスを崩して、胎児に影響を及ぼすことがあります。
自己判断してやめてしまわずに主治医に相談しましょう。
妊娠前からよく相談しておくことも大切です。
妊娠中におすすめするサプリメント
妊娠中におすすめするサプリメントがあります。ここでは葉酸と鉄を紹介します。
葉酸
葉酸は赤ちゃんの神経管閉鎖障害という先天異常の発生リスクを下げることができます。
妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、葉酸を400μg/日摂取することが推奨されています。
葉酸を食事から必要量摂取するのはとても大変で、サプリメントが効率よく摂取できます。
ただし、過剰に摂りすぎると中枢神経に障害が出るなどの悪影響があるため、適正量を守りましょう。
鉄
妊娠中は赤ちゃんの発育に鉄分が使われることで、妊婦さん自身が貧血になりやすくなります。
妊婦さんのおよそ半分は鉄剤を服用しているといわれています。
貧血を予防したり改善したい方は鉄のサプリメントがおすすめです。
特に「ヘム鉄」のサプリメントは食事より吸収がよいです。
ただし、便秘、胃のむかつきが起こることがあるので、その際は中止して様子を見ましょう。
薬に関する相談は医師か国立成育研究センターへ
国立成育研究センターでは、妊娠と薬を希望する女性の妊娠中の薬に関して相談に対応しています。
また、全国にある拠点病院の相談窓口でのカウンセリングを受けられます。
持病でお薬を飲んでいる方や妊娠に気づかずに薬を飲んでしまって心配な方は相談してみましょう。
妊娠中の薬の付き合い方のまとめ
ポイント
- 妊娠週数により赤ちゃんのリスクが変わる
- 薬の自己判断はダメ!
- 心配なことは医師、薬剤師、国立生育へ相談
赤ちゃんに影響を及ぼす薬はありますが、お薬とうまく付き合うことで、元気な赤ちゃんを産むことができます。
妊娠中でも治療に必要な薬はしっかりと飲むことも大切です。
自己判断で薬を中断せず、不安なことがあれば、医師や薬剤師に相談しましょう。
この記事を書いた人
- 現役病院薬剤師
- 急性期病棟で処方設計や薬剤管理指導を担当している。
- 4年間の実務経験と専門知識をもとに一般の人にもわかりやすい記事を作成。
あだっち@薬剤師×ライター