NIPT(新型出生前診断)を受ける施設は、認可施設と無認可施設の2種類あり、検査できる内容が多く金額も安い無認可施設を希望する人も多いですが、「無認可」で受けて大丈夫なのか不安な人もいます。
500組以上にNIPTのカウンセリングを実施した学会認定NIPTカウンセラーのなっちが、認可施設と無認可施設の違いをわかりやすく解説します。
結論、無認可施設で検査するメリットは大きいですが、遺伝カウンセリングが受けられる施設かどうか確認することが大切です。
この記事を書いた人
- 学会認定NIPTカウンセラー
- 500組以上のカップルにNIPTカウンセリングを実施
- 2児の母
認可施設と無認可施設の違い【検査項目の種類】
検査できる項目は無認可施設が多い
認可施設と無認可施設の一番大きな違いが、NIPTで調べられる疾患の種類です。認可施設は学会から、「13,18,21トリソミーのみ調べてよい」といわれているため、それ以外の病気の種類を調べることができません。
無認可施設では学会の縛りがないため、13,18,21トリソミー(基本検査)以外に性別や3種類以外の全ての染色体、より小さな欠失の変化も調べられます。クリニックによっては遺伝子異常(染色体よりさらに小さな変化)の検査もできます。
どれだけ調べても「赤ちゃんが絶対健康に産まれる」と保証することは今の技術ではできませんが、検査項目を増やすことで安心感が増えるという理由で無認可施設で検査を受けたい人が多いです。
認可施設で基本検査以外に調べられない理由
13,18,21トリソミーがNIPTで陰性だった場合、その検査の精度は99.99%正確だということがわかっています。これは精度の高い検査といえます。一方、他の染色体に関しては本当にその結果が正しいのか解釈が難しいからです。
認可施設で性別を伝えない理由は、倫理的配慮だと学会が思っているからです。多くの女性は「XX」、男性は「XY」の性染色体をもつことが多いですが、ときどきXが一本増えたり減ったりすることがあります。性染色体の過不足は、身長や生殖機能(妊娠のしやすさ)に影響しますが、健康に生きられる可能性も大きいです。しかし、妊娠中に性別の違いを知ってしまうことは中絶につながる可能性があり、倫理的問題につながるため認可施設では性別を伝えない選択をしています。
検査の精度や倫理的問題で日本の認可施設では13,18,21トリソミーの3種類の疾患に限定していますが、アメリカや韓国など海外では性別を伝えている国が多いです。また、日本でも他の染色体についても伝えるか議論が進んでいるため今後検査内容が変わる可能性が高いです。
認可施設と無認可施設の違い【遺伝カウンセリングの質の保証】
認可施設は産科と遺伝の専門家が必ずいるので安心
認可施設になるためには下記の条件があります。
認可施設の条件
- 臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーがいる
- 専門外来で30分以上の遺伝カウンセリングができる
- 検査後の妊娠経過のフォローアップができる
- 確定検査(絨毛検査、羊水検査)ができる
- 小児科の臨床遺伝専門医と連携がとれる
産科と遺伝の専門家が必ずいる認可施設なら、どの病院を選んでも十分な遺伝カウンセリングを受けられるという安心感があります。無認可施設は独自のルールで運営されるため、誰がカウンセリングを担当しているか事前に確認する必要があります。
遺伝の理解はすごく難しいです。私は認可施設でNIPTカウンセリングを担当していますが、「思ったよりわかることが少ないんですね!」「3つの染色体しかわからないんですね..」と検査の内容を十分に理解されずに来院される方も多いです。また、もし検査が陽性(ダウン症候群の可能性が高い)場合はどうしますかと質問したときに夫婦で意見が違うこともありました。
無認可施設でも、遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが遺伝カウンセリングを担当している病院・クリニックは多いです。NIPTは採血でわかる簡単な検査ですがいのちに関わる大切な検査です。無認可施設での検査を考えている人は、検査を受ける前に正しい知識と夫婦の方向性が同じなのか確認するためにも遺伝カウンセリングを行なっている施設でNIPTを受けてほしいです。
認可施設と無認可施設の違い【羊水検査の保証】
羊水検査の実施場所の違い
NIPTは確定検査ではないため、検査結果が陽性の場合は基本的に羊水検査を受けます。その際、認可施設だと自施設か、提携病院を紹介してくれます。無認可施設の場合は自施設で羊水検査が行えるクリニックは少ないですが、検査できる病院を紹介してくれるクリニックが多いです。
羊水検査で必要になる追加料金の違い
無認可クリニックではNIPTが陽性だった場合、羊水検査の追加料金がかからないことが多いです。ただし、検査前に保証料金が必要だったり保証料金に上限があったりするので、NIPTを受ける前に羊水検査の保証について確認することをおすすめします。
認可施設では検査料金はかからないことが多いですが、診察料やカウンセリング料(1時間5,000円など)、入院費など別途費用がかかることが多いです。羊水検査を受けるならいくらかかるか認可施設の場合も事前確認をおすすめします。
認可施設と無認可施設の違い【料金の違い】
NIPTは自費検査なため、料金は病院が自由に設定できます。無認可施設の方が営業努力をしている分、安い施設が多いです。
安くて検査精度に問題ないのか不安に思う人もいますが、13,18,21トリソミーについては無認可施設は陰性的中率(陰性といわれて本当に陰性の確率)99.99%で検査精度は高いです。他の検査の精度については検査精度を出しているクリニックもありますが少ないのが現状です。
また、無認可施設ではホームページに必要な料金が明確に書かれており追加料金がかかりません。しかし、認可施設ではホームページに料金の記載がなかったり、診察料が含まれていなかったりわかりにくいです。
NIPTは10万円以上する検査なため、検査の料金は事前に明確にしておきたいですね。
認可施設と無認可施設の違い【検査の流れの違い】
認可施設でNIPTを受ける流れ
- かかりつけ医に紹介状をもらい、予約する
- 夫婦でNIPT施設を受診し、遺伝カウンセリングを受ける
- NIPTを受ける
- NIPTの検査結果を受け取る
認可施設で検査を受ける場合は、紹介状が必須です。そのためかかりつけ医に検査を受ける相談をするところから始めます。予約もかかりつけ医を通して行います。そして夫婦で病院に行き、検査前に遺伝カウンセリングを受け、いったん家に持ち帰り、後日採血のために来院します。検査結果は2週間後に来院して受け取ります。遺伝カウンセリング当日に採血して良い病院もありますが、最低2回は来院する必要があります。認可施設は時間や夫との時間調整など通院の負担がかかる点でデメリットです。
無認可施設でNIPTを受ける流れ
- NIPT施設にメールか電話で予約する
- (電話で)遺伝カウンセリングを受ける
- NIPTを受ける
- NIPTの検査結果をメールか郵送で受け取る
無認可施設で検査を受けたい場合は、クリニックに予約の電話かメール連絡し、日程調整したあとは採血のときの1回のみクリニックに来院すればよく、検査結果はメールや郵送が多いです。つまり、検査をしたいと思ってから結果がわかるまで時間が短く負担も少ないです。夫の来院が必須でないのも嬉しいですね。
注意点として、検査当日は採血のみで、遺伝カウンセリングを受ける場合は前日までに相談する必要がある点です。無認可施設で検査を希望する場合は、メールで「遺伝カウンセリングを受けたい」と伝えておくと安心です。
認可施設と無認可施設の違い【無認可施設の方が早く検査できる】
認可施設では妊娠10-11週でNIPT検査できます。無認可施設では妊娠6週と早い時期から検査できます。
認可施設のNIPTがおすすめな人
認可施設がおすすめな人
- 対面での遺伝カウンセリングを希望する人
- 妊婦健診で赤ちゃんの異常を指摘された人
無認可施設の遺伝カウンセリングは電話やWEBであることが多いため、対面でのカウンセリングを希望する人は認可施設がおすすめです。
NIPTカウンセラーとして強く伝えたいことは、NT肥厚(赤ちゃんの首のむくみ)など妊婦健診で赤ちゃんの異常を指摘された人は必ず認可施設での検査をおすすめします。出生前診断はNIPT以外にも腹部超音波検査や羊水検査など種類があります。NIPTで陰性の場合も、赤ちゃんの異常の原因は他にある場合も考え、認可施設で受けてください。
無認可施設のNIPTがおすすめする人
認可施設がおすすめな人
- 13,18,21トリソミー以外の先天性疾患を調べたい人
- 来院回数が少ない方が嬉しい人
- 夫と一緒に来院するのが難しい人
- 料金が安い方が嬉しい人
- 検査結果が早く欲しい人
- 妊婦健診で赤ちゃんの異常を指摘されていない人
13,18,21トリソミー以外の検査をしたい人は無認可施設の一択です。また、来院回数が少なく夫の同席が必須でないのは嬉しいですね。検査結果も、認可施設が2週間かかるのに対して、無認可施設は1週間と短いです。
NIPTの認可施設と無認可施設の違いまとめ
妊婦健診で赤ちゃんの異常を指摘された人は必ず認可施設で相談してください。とくに赤ちゃんに問題がなく、より多くの検査を希望する人や来院の負担が少ない方が嬉しい人は無認可施設がおすすめです。
無認可施設で検査することは問題ありません。ただし、学会基準のある認可施設とは違い、独自のルールで運営されているため、事前に「遺伝カウンセリングは誰が担当しているか」は最低限確認してください。
遺伝の専門家の遺伝専門医もしくは遺伝カウンセラーのいる病院・クリニックでの検査をおすすめします。