今まで認可施設では、原則35歳以上でないとNIPTが受けられませんでした。
それが、2022年から条件付きで撤廃されることが決まりました。
そこで今回は、年齢制限がなくなることで気をつけること、認可施設と無認可施設の違いはどう変わるか深掘りしてみました。
認可施設のNIPTの条件変更について
日本医学会の新指針では、NIPT対象者として以下の方を挙げています。
NIPT対象者
- 高年齢の妊婦
- 母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された妊婦
- 染色体数的異常を有する児を妊娠した既往のある妊婦
- 両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有していて、胎児が 13 トリソミーまたは 21 トリソミーとなる可能性が示唆される妊婦
- 胎児超音波検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された妊婦
ここまでは従来の条件と変わらないのですが、ここに以下の文面が加わりました。
ただし、対象疾患の発生頻度によらず、適切な遺伝カウンセリングを実施しても胎児の染色体数的異常に対する不安が解消されない妊婦については、十分な情報提供や支援を行った上で受検に関する本人の意思決定が尊重されるべきである
日本医学会) NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針 引用
NIPTの年齢制限が撤廃されて注意する点
NIPTの年齢制限が解除されたことで注意すべき点が2つあります。
NIPT は、マススクリーニングとして一律に実施されるものではなく選択肢の
日本医学会) NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針 引用
一つであることを説明し、誘導的ではなく自律的な意思決定を促さなければ
ならない。また、母体年齢が低下するほど陽性的中率は低下し、偽陽性例が
増える等の検査の限界を十分に説明することが必要である。
マススクリーニングとして行うべきではない
1つ目は、NIPTをマススクリーニングとしないことです。
マススクリーニングとは、みんなが一律に行う検査のことです。
NIPTを含め多くの出生前診断は命の選択につながります。
検査を受けるか受けないかはそれぞれの価値観によるものなので一律に行わないことが原則です。
しかし、妊娠すると赤ちゃんが元気に生まれてくるか、誰もが不安になると思います。
NIPTがこの不安を少しでも和らげる助けになるのなら、受ける人にとってメリットのある検査です。
ただ、反対に、「知らない方が妊娠生活を不安少なく送れる」という意見も自然なことだと思います。
そのため妊婦さんはNIPTの正しい知識を持った上でNIPTを受けるか受けないか選択することが大切になります。
よって、NIPTはマススクリーニングするべきではない検査なのです。
陽性的中率と偽陽性率の理解
NIPTの検査を受ける前に、検査精度について理解を深める必要があります。
NIPTは99.9%の精度と言われるほど正確性の高い検査ですが、99.9%が何を表しているかご存じですか?
陽性的中率=陽性と診断された人が本当に陽性であった確率
陰性的中率=陰性と診断された人が本当に陰性であった確率
偽陽性率=陽性と診断された人が本当は陰性であった確率
罹患率 | 陽性的中率 | 陰性的中率 |
1/10 | 99.1% | 99.9% |
1/50(40歳の妊婦相当) | 95.3% | 99.98% |
1/250(35歳の妊婦相当) | 79.9% | 99.996% |
1/1000 | 49.8% | 99.9999% |
NIPTは陰性と言われた場合、99.9%と高い精度で結果を信じられるでしょう。
しかし、陽性的中率は、40歳の妊婦さんの場合は95.3%とそれなりに高いですが、35歳の場合は79.9%と下がります。
若い妊婦さんほど陽性的中率の精度が下がり、羊水検査が必要になる頻度も上がります。
上のグラフは、妊婦さんへの説明でもよく使う、年齢別のダウン症候群が生まれる割合です。
40歳の妊婦さんの場合は106人に1人の確率でダウン症候群の子どもが生まれます。言い方を変えると、
40歳の妊婦さんはNIPT検査を受ける前は90.06%の確率で陰性ですが、NIPTを受けて陰性と言われると99.98%の確率で安心できるようになります。
35歳の妊婦さんの場合、NIPTを受ける前は97.5%の確率で陰性ですが、NIPTを受けて陰性と言われると99.996%の確率で安心できます。
35歳の妊婦さんは21.1%が偽陽性率です。
羊水検査では0.3%の確率で流産のリスクがあります。
偽陽性率が高くなると、元気な赤ちゃんの羊水検査のリスクが増えると考えられます。
この考えで、今まで認定施設では35歳未満のNIPTを基本的に行なっていませんでした。
しかし、リスクはあっても、10ヶ月赤ちゃんが元気か不安で、少しでも不安を解消するためにNIPTを希望する場合、その思いも大切にしようと認定施設でも希望者にはNIPTが対象になりました。
(実際は無認可施設で十分な遺伝カウンセリングを行わないNIPTを減らす目的が多いですが)
年齢制限撤廃後の認可施設と無認可施設の違い
35歳以上の制限がなくなったため、NIPTを希望する場合誰でもNIPTができるようになりました。
そのため認可施設と無認可施設の大きな違いは以下の3点になります。
検査内容
一番大きな違いが検査内容です。
よく認定施設でNIPTの説明をする際「性別はわかりますか?」と聞かれます。
認可施設では13、18、21トリソミーの3種類のみ調べるているので性別判定を含む他の疾患についてはわかりません。
無認可施設の場合は施設ごとに検査内容に縛りがないです。
よくあるオプションとして以下の物があります。
- 性染色体(性別はんてい)の数の異常
- 全染色体検査の数の異常
- 染色体の小さな欠失や重複
日本で一番選択肢が多いと言われるミネルバでは下記の検査もできます。
- デノボ
- 遺伝子異常
【2024年】ミネルバクリニックNIPTの評判・口コミまとめ
検査内容13、18、21トリソミー全染色体検査微小欠失デノボ(突然変異)100種の遺伝子(単一遺伝子疾患)検査費用179,500円~(13,18,21トリソミー+性染色体検査)来談回数0回~検査週数9 ...
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NIPTを受ける場合、どこまで検査をしたいか選択する必要があります。
検査の理解は医療者でも難しいため、夫婦が納得して検査できるように十分な遺伝カウンセリングを行なっている施設でNIPTを受けてもらいたいです。
遺伝カウンセリング
認可施設では、検査前の遺伝カウンセリングが必須になります。
検査内容の時に説明したように、検査の理解は難しいです。
そのためNIPTを受ける前に、NIPTは何がわかって何がわからないのか理解した上で夫婦にとってNIPTを受けることがメリットがあることなのか考えることが大切です。
遺伝カウンセリングをした後に「わかることは少ないけど少しでも不安が減るなら受けたいです」と言ってNIPTの検査を受ける方がほとんどですが、中には「意外にわかることが少ないんだ。やっぱり検査するのをやめます」と言ってNIPTの検査を受けないことに決めた夫婦もいました。
時間もお金もかけて悩みながらも受ける検査です。
無認可施設でもぜひ遺伝カウンセリングをやっている施設でNIPTを受けてもらいたいです。
羊水検査
NIPTで陽性だった場合は羊水検査が基本的には必要になります。
そのため認定施設でNIPTを受けてもし陽性だった場合は、その施設でNIPTを受けることができます。
しかし無認可施設の場合は、産婦人科でないことが多いため、自分達で羊水検査ができる病院を探す必要があります。
基本的には、妊婦健診を受けている病院に相談すれば羊水検査を受けられる病院を紹介してもらえます。
ただ、検査ができる時期が決まっているのでその場合は早めに相談してください。
また、認定施設でも無認可施設でも羊水検査を受ける際に追加料金がかかることがあるため、費用に関してはNIPTを受ける前に確認すると安心ですね。
無認可施設では羊水検査料金を保証しているケースが多いですが、検査プランによったりオプションだったりするので注意が必要です。
NIPT認可施設での年齢制限撤廃まとめ
認可施設でNIPTの年齢制限が撤廃されたことで、よりNIPTを受ける病院の選択肢が増えました。
若い妊婦さんだとNIPTでの陽性の場合の精度は低くなりますが、陰性と言われて安心したい気持ちもあると思います。
認可施設でも無認可施設でも、納得した上で検査が受けられるよう十分な遺伝カウンセリングを受けてもらいたいです。